コラム

【コラム】中小企業共通EDI普及活動を通じて思うこと

1.中小企業共通EDIとは

EDIは企業間取引をデジタル化するものであり、大企業を中心に導入が進んでいるが、中小企業では様々な問題により導入が進んでおらず、いまだにFax.やメールを使った受発注が中心で非効率なやり取りが行われている。

中小企業共通EDIは中小企業の企業間取引をデジタル化させるために平成28年度中小企業庁事業「次世代企業間データ連携調査事業」により策定され、実証実験の結果50%前後の事務効率化が認められた。その後の普及活動をITコーディネータ協会(以下、ITCA)が実施しており、2つの施策を推進している。

· 中小企業共通EDI標準仕様に準拠した製品やサービスの認証制度

· 企業の共通EDIの導入を支援する「共通EDI推進サポータ」の育成と認定

私は推進サポータ認定制度が開始された2020年初頭のサポータ研修に参加して認定サポータとなっている。現在ではITC京都の会員でサポータ登録されているのは13名に及んでおり、他団体と比較しても多い方である。

2.2024年度の普及活動

専門家派遣等を通じて共通EDIの紹介をしており、一定の評価は得られものの自社が主導して取引先を巻き込んで取り組もうという企業にはなかなか出会うことができていない。認知度を上げるために2024年度は紹介セミナーを積極的に行なった。これはトップダウンの普及活動はITCAが行い、ボトムアップの普及活動を各地のITC届出組織が行うという協力体制のもと進めているものである。

 

2024年度の実施セミナー)

· 京都銀行Webセミナー 2024717日 「受発注のデジタル化」

· ITC京都経営セミナー 20241127日 「企業間取引のデジタル化・効率化」

· 京都府中央会理事会 2025121日 「企業間取引のデジタル化・効率化」

· KCA2月例会 202526日 「企業間取引のデジタル化・効率化」

 

また34日には共通EDIサポータ連絡会においてITC京都における普及活動の状況報告を行なっており、積極的な活動に対し各地のサポータから高い評価をいただいた。

京都銀行のセミナーでは京都銀行の顧客61名が参加し、その後5社と個別相談を実施した。各社それぞれの課題を持っているが、どこも自社主導では難しい企業ばかりであった。しかしその内の1社とは継続的に相談を重ねており、2年後に販売管理システムをリニューアルする際に共通EDIの導入検討をすることにしている。

ITC京都の経営セミナーを通じて中央会や京都コンピューターステム事業協同組合(KCA)から依頼を受け、それぞれの組織向けの共通EDIセミナーを行なった。多方面で興味を持っていただけたことが大きな成果だと考えている。

3.普及活動を通じて思うこと

ボトムアップの地道な普及活動を続けているが、導入にまで発展する事例がまだ出てこないことに虚しさを感じつつも継続することが重要であると自分を奮い立たせている。中小企業がシステム導入の投資をする場合、自己資金のみでそれを実施することはまず期待できない。そのため補助金の活用が不可欠であり、今年であればIT導入補助金の複数社連携IT導入枠を利用する方法が考えられる。同業種の企業が加盟している組合等で共通EDIを導入する場合は全国中央会の情報ネットワークシステム等開発事業により2000万円の補助金を利用することが可能である。例えば2021年、2022年に実施した京都中央卸売市場の仲卸業者の組合が共通EDIの導入を行うことで受発注のデジタル化が実現でき、各社の事務効率が飛躍的に向上することが期待できる。実現には数々のハードルが存在するが、京都市と仲卸業者の組合に働きかけていきたいと考えている。

4.共通EDIが普及した姿

日本全体の効率化、中小企業を含めた効率化を進めていくためには大企業の協力は不可欠である。大企業が発注情報を自社のWeb-EDIだけではなく、共通EDIにも接続するようになれば受注側の中小企業が共通EDIを導入することにはずみがつくと思われる。そのためには国への働きかけ、経団連や商工会議所、業界団体等の協力が不可欠である。ここはITCAの推進に期待したい。経産省が進めているシステム連携基盤であるウラノス・エコシステムにより企業や業界、国境をまたぐ横断的なデータ共有やシステム連携の中に共通EDIも組み込むことで大きな価値を生むことになる。これが実現できたら日本全体の生産性は飛躍的に向上することになる。

ウラノス・エコシステム

昨年8月に大阪国税庁から声をかけていただき、共通EDIの説明を行なってきた。国税庁としては税務申告のみならず、そこに至る取引がすべてデジタル化できることを望んでおり、大阪国税局の活動として中小企業のデジタル化推進を強化している。そのような中、近畿圏各地での納税協会等を通じてデジタル化の講演も増えてくる見込みである。すでに6月の講演オファーももらっており、前向きに対応していきたい。

 

国税庁が描く納税者のデジタル化

◆執筆者プロフィール

氏 名:曽我部 泰博

所 属:特定非営利活動法人ITコーディネータ京都 理事長

バイタルスパーク合同会社 代表社員

資 格:ITコーディネータ/PMP/厚労省ものづくりマイスター(IT部門)/

CompTIA Cloud Essentials/JGAP指導員