【コラム】DX認定とITコーディネータの役割

はじめに

近年、中小企業においてデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が求められています。しかし、多くの中小企業では「DXとは何か」「どこから着手すればよいのか」が明確でない場合が多く、DX推進のハードルが高いと感じられています。

こうした背景の中で、経済産業省が策定した「DX認定制度」は、DXに取り組む企業を評価し、一定の基準を満たした企業に認定を付与する仕組みになっております。しかし、中小企業においては、DX認定の取得がDXのゴールではなく、「これからDXに取り組む体制を整備している企業」というレベル感であることを理解することが重要です。

本コラムでは、中小企業に焦点を当て、DX認定の概要と、DX推進におけるITコーディネータの役割について考察します。

DX認定制度とは

DX認定制度は、国が策定した指針に基づき、DXに取り組む事業者を認定する制度です。認定基準は経済産業省令に定められており、申請にあたってはデジタルガバナンス・コードの項目に対応した内容を記述する必要があります。

特に中小企業においては、DX認定を取得することが「DXに取り組む体制を整備している企業」としての第一歩となります。認定基準には以下の要件が含まれます。

 

1. 経営ビジョンと戦略の明確化 – デジタル技術を活用した経営ビジョンが策定されていること。

2. 組織体制の整備 – DX推進のための組織や責任者が明確になっていること。

3. デジタル技術の活用計画 – AI、IoT、クラウドなどの技術をどのように活用するか計画が立てられていること。

4. データの利活用 – 企業の業務や経営にデータを活用できる環境が整っていること。

5. ガバナンスとセキュリティ対策 – 情報セキュリティやリスク管理の体制が確立されていること。

 

DX認定の取得は、中小企業にとって自社のデジタル化状況を客観的に評価し、社内外に対してDXに取り組む意思を示す機会となります。しかし、DX認定を取得すること自体がDXの目的ではなく、実際に業務の変革や新たなビジネスモデルの創出を目指すことが重要です。

 

中小企業におけるDX推進の課題

出所:経済産業省 DX支援ガイダンス 中堅中小企業等のDX現状より

上図のように、中小企業がDXを推進する際、多くの課題に直面します。特に人材面・資金面の課題を乗り越えることが重要です。

 

• 人材不足:DX推進を担うIT人材が不足している。

• 経営層の理解不足:デジタル化の重要性を理解していても、具体的な取り組みにつなげられていない。

• 予算の制約:大企業と異なり、DXに十分な投資ができない。

• 企業文化・風土:新しい技術や業務フローへの適応が難しい。 

   o 適切な人事評価の不足:DX推進に取り組む従業員の努力が正しく評価されていないことが、モチベーションの低下につながる。

   o キーマンの選出の重要性:DX推進を成功させるためには、社内の推進役となるキーマンを適切に選出し、権限と役割を明確にすることが求められる。

 

ITコーディネータの役割

ITコーディネータは、企業のIT活用を支援し、経営とITの橋渡しをする専門家です。特に中小企業においては、DX推進を円滑に進めるために以下のような役割を担います。

 

1. 経営戦略とDX戦略の橋渡し – 経営層と現場の間でIT活用の方向性を調整し、ビジネス戦略に適したデジタル施策を立案する。

2. DX推進計画の策定 – 現状分析を基に、企業の業務プロセス改善や新たなITツール導入計画を策定する。

3. デジタル人材の育成 – 社内のITリテラシー向上を支援し、DXを担う人材を育成する研修プログラムの導入を推進する。

4. 技術導入のサポート – 適切なシステムやツールの選定、ベンダーとの交渉支援、導入後の運用改善を支援する。

5. 継続的なフォローアップ – DX施策の進捗をモニタリングし、改善点を分析しながら長期的な成長を支援する。

6. キーマンの選出支援 – DX推進を成功させるために、組織内のキーマンを特定し、リーダーシップの育成を支援する。

7. 補助金・助成金活用のアドバイス – 中小企業がDX推進に必要な資金を確保できるよう、補助金・助成金制度の活用方法を提案する。

8. 業務プロセスの最適化 – 既存の業務フローをデジタル化することで効率化を図り、企業の生産性向上を支援する。

 

まとめ

DX認定は、中小企業がデジタル化に向けた第一歩を踏み出すための重要な制度ですが、認定を取得するだけではDXの目的を達成することはできません。本当に必要なのは、業務プロセスの変革や新たなビジネスモデルの創出といった実践的なDXの取り組みです。

 

そのためには、ITコーディネータの支援を受けながら、経営とITを統合し、組織全体でDXを進めることが重要です。特に中小企業では、限られたリソースの中で最適なDX施策を選択し、段階的に進めることが求められます。

さらに、DXを推進するためには、適切な人事評価制度とキーマンの選出を通じて、組織全体の変革を促す文化を醸成することが不可欠です。

 

■執筆者


高橋幸司(タカハシ コウジ)

Koji Takahashi


所属

株式会社 東洋 常務執行役員

NPO)ITコーディネータ協会 理事

NPO)ITコーディネータ京都 理事


キャリア

25年以上にわたりIT業界でキャリアを積んできました。ネットワークエンジニアとしてのキャリアをスタートさせ、数多くの中小企業に対しネットワークやサーバーの設計・構築を行い、その後はセキュリティエンジニアとして、様々な事業者に対するセキュリティ対策を担当しました。さらに、クラウドエンジニアとしてAWSの設計・構築、DevOps環境の構築、SaaSインテグレーションなどを手がけてきました。また、FileMakerなどのローコード開発ツールを利用した開発も行ってきました。現在は、上記スキルに加えITC京都およびITCA(ITコーディネータ協会)の理事として、企業支援や教育活動にも尽力。多数のIT関連資格を保有し、幅広い知識と経験で企業のIT戦略をサポートしています。


保有資格

ITコーディネータ

中小企業診断士

ITストラテジスト

公認情報セキュリティ監査人

情報処理安全確保支援士

米国PMI認定PMP